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世界遺産(World Heritage

ユネスコの世界遺産(World Heritage)と鉄鋼との関係については、日本では少し不思議に感じる方もあるでしょう。

現在(1998年末登録)の582件の目録の中には、鉄(製鉄所)に関する以下の3件が文化遺産(Cultural Heritage)として登録されています。

これは、世界の人々が技術・産業上の遺産も、歴史的な建造物と同様な価値観をもって文化を捉えているからと思えます。

ここでは、そんなサイトを紹介します。

  • アイアンブリッジ峡谷( Ironbridge Gorge; イギリス )

    アイアンブリッジは、1779年に完成した鉄橋で、固有名詞で「鉄橋( Ironbridge )」と呼ばれています。

    このアイアンブリッジは人類史上初めて造られた鉄橋で、この地域は産業革命の発祥地としても世界に知られています。

    イングランド中央部のコールブルックデイルにある溶鉱炉において、1708年に燃料を木炭から石炭(コークス)に変える試みがなされました。

    18世紀初頭において、イギリスは急増する鉄需要に対し、製鉄原料としての木炭の欠乏に直面していました。

    やがて、A.Darby 父子の活躍により、石炭(コークス)へのエネルギー転換に成功し、18世紀の後半には鉄の大量生産が可能となりました。

    このアイアンブリッジも A.Darby 3世の指揮により完成されています。

    峡谷には、博物館がありダービー家の溶鉱炉や鉱石を運んだトロッコなど、当時の様子を細部にいたるまで再現しています。
    1986年登録。

    1. TBSのTV番組「世界遺産」
      (日本語)TVでの過去の番組の紹介。スライドショーもあります。
    2. ユネスコの解説
      (英語)
    3. Ironbridge Gorge Museum
      (英語)アイアンブリッジ峡谷博物館のサイト。残念ながら、内容は詳しくありません。
    4. The Ironbridge Gorge Museums - Shropshire UK
      (英語)アイアンブリッジ峡谷博物館の総合案内です。Kids'のページもあります。 バーチャルツアーもできます。
    5. The Ironbridge Institute
      (英語)バーミンガム大学のアイアンブリッジ研究所。遺産管理と産業遺産に関する大学院ならびに研究施設です。コースの内容が紹介されています。

  • エンゲルスバリの製鉄所( Engelsberg Ironworks ; スウェーデン )

    歴史あるスウェーデンの鉄鋼技術を現在に残す、今もよく保存された森の中にある17-18世紀の典型的な製鉄所です。

    18世紀初頭、スウェーデンは世界の生産量の 1/3 を占める世界最大の鉄生産国であり、イギリスの鉄需要の約 2/3 はスウェーデンからの輸入であった。

    エンゲルスバリのあるバリスラーゲン鉱床地域は「スウェーデンの大黒柱」と呼ばれる高品位の鉄鉱石の産出地です。

    20世紀の初めに、この製鉄所は次第に時代遅れとなり、現在は時の流れに忘れ去られてしまったかのように、森の中に静かにたたずんでいるそうです。 1993年登録。

    1. ユネスコの解説
      (英語)
    2. Engelsbergs brunk
      (スウェーデン語)

  • フェルクリンゲン製鉄所( Volklingen Ironworks ; ドイツ )

    ドイツ南西部のザールランド州にある19世紀からの高炉一貫製鉄所の史跡です。

    20世紀初頭には、ドイツでも1、2をあらそう製鉄所でした。

    この製鉄所は、近代の製鉄技術で多くの貢献をした製鉄所でもあります。

    焼結設備は、この製鉄所から始まりました。1928年に導入されました。

    建設後100年を超える設備、建屋も稼動したままの姿で、現在も保存されています。

    この製鉄所は1986年に閉鎖され、地元は工場を撤去しハイテク工場を誘致しようとしましたが、当時のザールランド州のブライテンバッハ文化相は「ヨーロッパ産業時代の記念碑」という計画をたて、この計画は次第に理解されるようになりました。

    高炉、熱風炉を含む面積6haの地区は、多機能文化センターとして整備されています。

    ガス送風棟は文化行事や会議場として、工場はザールランド造形大学の実習場や、起業家センター兼科学技術センターとして産業人に活用されているそうです。 1994年登録。

    1. ユネスコの解説
      (英語)
    2. Alte Volklinger Hutte
      (英語)この製鉄所の案内や、歴史を知ることが出来ます。
    3. Volklingen Old Iron Work
      (英語)ザールランド大学の情報科学部により運営。高炉の並んだ圧倒的な景観写真や、ガイドツアーの様子、あるいは全景や高炉作業のビデオクリップも用意されています。


日本でも石見銀山遺跡(島根県)を世界遺産に登録しようとする動きはありますが、残念ながらわが国には今のところ、以上のような規模の「近代の産業遺産」は一つもありません。

(工場の建物を他に転用した例は有りますが)

世界有数の工業国として、工業都市や工場施設の整備保存に目を向けていくことが必要でないでしょうか。

先に紹介したコールブルックデイルは、史跡公園として再生され、今日では世界的な産業考古学とナショナルトラストの中心地となっています。

この分野でも、日本は諸外国に学ぶべきところが多いにありそうです。


鉄生産遺構

上記以外の世界の鉄生産遺構のサイトを集めてみました。
  • Rivers of Steel -National and State Heritage Area( Steel Industry Heritage Corporation ; 米国 )

    ペンシルバニア州南西部(ピッツバーグ周辺)の鉄鋼遺産を保存し、地域開発に役立てる目的で、非営利のSIHC( Steel Industry Heritage Corporation )が活動を行っています。

    この地域のツアー(例えば、Big Steel Journey)や観光資源(Carnegy Science Center等)、さらには昔話や、歌、料理のことまでいろいろな情報が載っています。

    米国のこのような施設は、エンターティメント性が強く、アイマックスシアターが併設されたりしています。

  • Tannehill Ironworks Historical State Park (米国)

    アラバマ州バーミンガムにある製鉄所跡の公園の紹介です。


参考
鉄鋼界報 1995/10/1・11(日本鉄鋼連盟)
飯田賢一;技術史(放送大学教材、1990)
「世界遺産を旅する」3(フランス・スイス・イギリス・アイルランド)(近畿日本ツーリスト、1997)
「世界遺産を旅する」5(ドイツ・オランダ・ルクセンブルグ・北欧)(近畿日本ツーリスト、1998)

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